「再会」 MとK

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ふたりは同じ日に生まれた。


母同士、面識もなかったし、
家が近いわけでもなかったが、
かかりつけの産婦人科が同じで
たまたま同じ日に産気づき、
ふたりは時間差で生まれた。

母たちはその小さな医院の個室でたまたま隣り合わせで入院したのが縁で、
顔を合わせ、言葉を交わした。


退院しても1年くらいは
たまに電話をしてお互いの近況を語り合った。

お互いの家にも遊びに行った。


赤ん坊がハイハイみたいなことを始めた頃、
男の子の母は女の子の家を訪ねた。

女の子は
外国のお人形さんみたいに
お目々がパッチリとして
髪がクルクルカールした愛らしい赤ん坊になっていた。

女の子も男の子も
どちらかと言えばのんびりとしたマイペースな赤ちゃんのようで
初めて遭遇する同じ月齢のお互いを特に意識することもなく
興味もなさそうに見えた。
しかししばらくすると二人は
どちらからともなく同じ方向へ這っていき、
何となく並んでお座りをした。
そして部屋のドアを一緒にさわって確かめてみたり
同じ方向を一緒に見ていたり。
そのごく自然な二人の様子を
母たちは
何だかおかしくてクスクスと笑いながら眺めた。

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ふたりが1才になる直前、
今度は女の子の方が男の子の家にやってきた。
しかし、同じ市内とは言え離れた場所に住むふたりの母は
それから子育てと生きることに忙しく
それきり会うことはなくなった。
やりとりは儀礼的な年賀状だけになってしまう。
まだ一部の人しかケータイを持っていない時代。
メールもない、そんな時代。



17年の時が経ち
ふたりの赤ちゃんは高校3年生になった。

そして・・・

たまたま同じクラスになる。


そう――

ふたりは偶然、同じ高校に入学していた。


男の子の母がそのことを知ったのは
入学して9ヶ月も経ってから。

女の子の母からのいつもの年賀状に
いつもと違うことが書いていたのだ。

「Mの高校の入学式でもらった名簿の2組のところに
K太郎くんと同じ名前が書いているのを見つけたが
もしかしたら同じ高校なのか??」 と。

K太郎の母は驚いて
年賀状の返事に自分のメールアドレスを書いて送り
それからMの母とK太郎の母は
ときどきメールを交わすようになった。

しかしMとKは1歳の記憶があるわけでもなく
クラスも離れていたので
ほとんど面識のないままだった。



そうして3年になったふたりは初めて同じクラスになり
言葉を交わす。

もちろんふたりには「再会」(再び会う)の意識はない。



Mちゃん 「同じ病院で生まれたんだってね。
        隣で入院してて知り合ったってママから聞いた。
        何日生まれ??」


K太郎  「6月11日。」

Mちゃん 「!!!」


そう、Mちゃんは、
母たちは同じ病院で出産したのが縁で知り合った。とだけアタマにインプットされており、
同じ日に生まれたとは知らなかったのだ。



            



夏休みになった。

MちゃんとK太郎の高校では毎年
夏休み中に三者懇談が行われる。
先生と本人と保護者で進路について話しあう機会である。


MとKの母は、懇談の日に会う約束をする。
同じ日に設定されるように懇談の希望を出したのだ。


K太郎の懇談が終わり
彼の母が教室の外に出ると
階段の踊り場にMの母がいた。

Mの母は、

あまり変わっていないKの母(ホンマかいな!?)と
面影のかけらもなく青年に変身したKを見た。

Kはそのまま受験のための補習授業へ向かい、
Mの母とKの母は二人で再会を喜び合った。


話に花が咲き始めたとき
MとKの担任のA先生が教室から出てきた。

Mの母は「Mの母です」とA先生に挨拶をした。

A先生は笑顔で応えながらも
懇談を終えたばかりのKの母と次の懇談のMの母の間の
ただならぬ雰囲気(学校という場所柄、抑え気味にはしているが、何だか盛り上がっている様子)
を感じ取り、ちょっとけげんな顔を二人に向けた。

「ドーユーカンケーデスカ??」

と言わんばかりに。


そこで

MとKがたまたま同じ日に同じ病院で生まれたこと、
1歳くらいのときに会ったきりになっていたが
偶然同じ高校に進み、3年で同じクラスになったこと、
母同士も今日が17年ぶりの再会であること。

を 手短かに話すと、
A先生は目を輝かせて驚いた顔をした。

「良かったらMさんの懇談の時間まで
教室で話されては?
クーラーがついてて涼しいですから」
先生はそんな粋なことを言って二人を教室へ招きいれ、
懇談の重要書類を抱えてどこかへ立ち去った。



30分ほどして
Mちゃんが教室に現れたところで
母たちの終わらないおしゃべりはようやく終了した。

Mちゃんを見たK太郎の母は
可愛い乙女に成長したMちゃんを見て
思わず「初めまして」と言い、
「あ、初めましてじゃないけど!!」と声に出して笑った。


あのあと、
Mちゃんの懇談の際に
「MさんとK太郎は運命の出会いで、お互い運命の人なのかな?」と
A先生が言ったそうだ。

(おっちゃんはいつの世も余計なことを言う)

(年頃の乙女にそんなこと言わんでエエねん・・・)



これから受験を迎える3年生は
それどころではないかもしれない。
けれど卒業まであと7ヶ月。
ふたりとも楽しく過ごせればイイね。

これからふたりがもっともっと話をするようになるのか―
そうでもないのか―

それはまだ誰にもわからない。


 お わ り 

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